素敵な協議離婚~あなたが恋するメイドの私~

10月11日②

「愛する男って……誰だったんですか?ランス様も知っていた方ですか?」

飛び出そうな心臓を両手で抑え、その凄く重要な答えを懸命に探る。

「………結婚してすぐ、事務所にある写真が送られてきた……楽しそうに笑う妻と男の写真だ。オレはその男の素性を調べたよ……そいつは」

「そいつは!?」

食い気味に詰め寄る私に、ランスはくくっと笑って両手で落ち着けと制した。

「メグ、そんなに必死にならなくても。もう、過去のことだよ。そこまで気にしてくれて嬉しいけど……」

違うわーーーーーー!
ていうか、必死にもなるでしょうよ!
自分の知らないところで、不貞疑惑がかかってるんですよっ!?
しかも、知らない男と!

「あの、ランス様、その男は誰なんですか!」

早く言え!

「………写真家のジェラルド・ハリソンだ」

「……………………はぁ」

「知ってる?」

知ってるわ、とっても良く。
そりゃあ、楽しく話すし笑いもする。
ハイスクール時代からの友人だもの。
それが、どうして『愛する男』になるの?

「あの、なぜ奥様がジェラルド・ハリソンを愛していると思われたんです?」

立ったままの私に、彼は自分の横のベンチをポンポンと叩きそこに促すと、話しにくそうにポツリポツリと話始めた。

「写真は日を置いて、何枚も届いた。写真教室での二人、彼女の車の中での二人、オレの知らないどこか遠くの山小屋での二人……さすがにオレも限界でね、当のジェラルドに会いに行ったんだ」

「げ!」

「げ??」

「あ、いえ、それは修羅場かなと……」

「ふっ、そうだな。もう二度とごめんだよ。………あー、そこでジェラルドにメリーとの関係を聞かされた」

ああ、友人だと言われたのね。

「恋人だと言われたよ」

「んなぁっ!?」

ジェラルド?!
一体どうしたの!?

私のおかしな声はスルーしてランスは先を続けた。

「ハイスクールの頃からずっと付き合っていたらしい。だが、父親の頼みでオレとの結婚を断れなくて……」

半分嘘、半分合ってる。

「お互い忘れられずに関係を続けていたそうだ」

「それは……そういう関係ですか?」

「そう聞いた」

ジェラルドぉーーーーー!?

いやいや、なんなの?何が起こってたの?!
私の知らないところで勝手に拗れてるじゃない!?
長年の友人だと思っていた人は、嘘をついて私の恋人だと名乗り、結婚相手はそれを信じて私のことを避けまくったと??

私は怒りのあまり小刻みに震え、ベンチに伝わったその振動を地震が起こったのかと勘違いしたランスが慌てて立ち上がった。