「わ〜!先輩、見てください!綺麗なイルミネーション♡」

「……こんなの、ただの電球の集まりだろ」

「うわ!ロマンの欠片もないっ!」

「俺にロマンなんて求めんな」

「あ、大丈夫です。先輩には微塵も期待してません」

「……お前、ほんとムカつくやつだな」


私より一つ年上で、同じ高校に通うたける先輩は、どうやら私のことを鬱陶しく思っているらしい。

かれこれ、たける先輩を好きになって2年の月日が経つけれど、私とたける先輩の距離が縮まることはこれっぽっちもない……いや?

むしろ、距離は遠くなるばかり!

押してもダメなら引いてみろ、なんて。
一体誰が最初に言い出したんだろう。

押して押して押し倒した結果、本気でたける先輩のお怒りを買ったあの日のことは忘れないし。

逆に引いて引いて引きまくった結果、"俺の日常からうるさいヤツ"が消えたと単純に喜ばれたことも忘れない。


え?……なに?
もしかして私、恋の駆け引きとかできないタイプなの?奥手?奥手女子?って、


上手くいかない先輩との恋に頭を抱えたのも……、もはや遥か昔のことだ。


「いいじゃないですか!そんなムカつくやつに絡まれるのも、今日で多分……きっと……恐らく……最後なんですから」

「…………」

「うわ、疑ってる!先輩が疑いの目で見てくる!」


───そして今日。
12月24日、恋人たちのクリスマス・イブ。
聖なる夜に……、私はたける先輩を諦めることを決めた。