あの頃、きみといくつもの朝を数えた。―10years―





「寂しくなったらいつでもうちにおいでよ。兄ちゃんの部屋もあるし」

酒の弱い三鶴はビール一杯で真っ赤になっていた。


「弟にマイホームを先越された俺のプライドをえぐる気か」と、冗談まじりに返しながら、三鶴のことはすげえ頑張ってるなって尊敬してるし、岸と結婚したことも優月が生まれたことも、本当に心の底から嬉しかった。




この10年の間で色々なことが変わった。


こうして酒を飲むことも覚えて、仕事をする大変さもやりがいも感じて、母さんや親父にも感謝できるようになった。


高校生の頃、なんとなく思い描いていた未来に俺はいる。


高校を卒業して短大に通いながら物流センターでのバイトを続けて、センター長からは『正社員にならないか』と誘われていた。

でも俺はそれを断り、今はすぐに靴がすり減ってしまうほど営業であちこち走り回ってる。


なにかを深く考えているようで、実はなんとかなるという考え方は変わってない。


今の会社に就職したのも割りと行き当たりばったりだったし、10年後のさらなる未来の姿なんて俺は全然想像できない。


27にもなって、そんなことを言ってたらダメなんだろうけど、俺はこの先も自分が決めた道を進んでいこうと思ってる。



病気と懸命に戦い、笑顔で自分らしく最後を迎えた海月のように。