お店を出て、駅まで歩きながら藤澤さんに尋ねた。

「藤澤さんは、プロに興味はあるんですか?」

「プロですか……」

前を行く沙夜さんと栗原さんは、なにやら後ろから見るともはや付き合ってるのか?と思うほど絵になる。
もともと沙夜さんも綺麗な人なので、彼の隣にいても引けを取らないのがすごい。

彼らの後ろを並んでついていく私と藤澤さんの間には、絶妙な距離があいている。


なかなか質問に答えない彼を不思議に思い、この一ヶ月で得た情報を口にした。

「だって、日本代表にも選ばれてますよね?それも何度も。少し前の試合にもスタメンで出てますよね?それなら……プロに行きたいって思ったりしないのかなぁと」

「……難しい質問ですね」

藤澤さんは肩をすくめて、どこか遠くを見るように目を細めた。

「そんな簡単じゃないんです、プロに行くのは」

「…………あんなにすごい守備ができるのに?」

「守備だけで通用する世界じゃないですから」


だから、社会人野球でじゅうぶんです。
そう言って、彼は目を伏せた。

上昇志向はないのかな、もったいない。日本代表に選ばれていても、あれだけすごい技術があっても、それでもプロに行きたいという一言を簡単に言わないなんて。
栗原さんはあっさりとその気持ちを認めたというのに。


「私、今度の都市対抗、ドームまでやまぎんを応援に行くんです。今年の夏休みはそれに費やすことにしました」

思い切って、東京にまで追いかけていくことを話した。
ここまで来たら隠すものなど何もないのだから。

振り返った藤澤さんが、そうですか、と冷静に返す。


「ホームラン打ちましょう!きっと打てます!」

「─────は!?」

突拍子もない提案なのは百も承知だ。
もちろん、この焦ったような彼の反応も予測済み。