そうこうしているうちに五球団目のアナウンスが始まっていた。

『第一巡選択希望選手、栗原和義投手、山館銀行』


声も出ずに私は勢いよく淡口さんと翔くんを振り返る。
二人も大きな口を開けて笑顔満開だった。

ひと呼吸おいて、三人で抱き合った。

「呼ばれた!一巡目!」

やったあ!と飛び跳ねていたら、六球団目のアナウンス。


『第一巡選択希望選手、栗原和義投手、山館銀行』

また呼ばれた!
会場も少しざわつく。


七球団目。

『第一巡選択希望選手、栗原和義投手、山館銀行』

八球団目。

『第一巡選択希望選手、栗原和義投手、山館銀行』

九球団目─────



結局、栗原さんは五球団に一巡目の指名を受けた。
興奮している暇もない。

会議ではすぐに指名が複数いた選手の交渉権を得るために、球団の代表がくじ引きを始めた。
最多の五球団に指名された栗原さんのくじを、スーツ姿の男性たちが引いていく。

緊張の瞬間だ。

「さて、どこになるかな…」

淡口さんも真剣な表情でテレビ画面を見つめている。

ふと後ろを見たら、さっきまでまったく興味のない顔をしていたはずの沙夜さんがすぐ後ろで祈るように手を組んでテレビを見ていた。
私と目が合うと、ちょっと恥ずかしそうにはにかむ。
それに返すように微笑んで、再び座り直して画面を睨んだ。