「無理です」
「やめときな! あんな規格外!」
剣も露(あら)わな絆さんの言葉に、わざとらしく耳を塞ぐ。
「無理ですー。十五年近く片想いしてて、ほかに好きな人も出来なかったんですもん。実のとこ在義父さんが取り乱すの珍しいんで見てて面白いです」
「在義様が取り乱すのはわたしも見てみたいわ! じゃなくて! え、なに? 神宮と本気で付き合ってるの? 今、咲桜の学校の先生よね? 笑満、そうよね?」
と、私を飛び越えて笑満に確認する。
ちらっと隣を見ると笑満は苦笑していた。
「先生ですよ。一応、学校ではあたしたちとも知り合いではない体を装ってますけど。でも『先生』じゃなくて『流夜さん』の顔だと、咲桜のことだだ甘やかしです。見ててウケるくらい」
ウケてたんか。
笑満も頼も流夜くんとは顔見知り。普段は『流夜さん』って呼んでる。
笑満はくすくすと続ける。



