「まあ、知ってるけど」


と、席を立って、私から成績表を受け取った先生は、今度は軽く机に腰かけている。


腕を組んで軽く呆れた風だ。


「すみません……先生が在義(ありよし)父さんになにか言われたら……」


先生の隣に突っ立って、私は小さくなるしかない。背丈ばかりある図体してるけど。


「ああ、そういうのは気にするな。在義さんにシメられるのはいつものことだから」


「父がいつもいつも申し訳ありませんんんんん!」


「とりあえず土下座するのはやめろ。娘溺愛さんに知られたら怒られるどころじゃないから」


「はい……」


先生に促されて、立ち上がる。


この人――神宮流夜先生は、私が在籍する私立藤城(ふじしろ)学院高校の歴史の先生。


背の高いキリッとした美形さんで、頭がよくて教えるのも上手。


女子にも男子にも先生たちからも人気があって、女子からは当然のように告白を受けたりしている。でも、もちろん先生だから断っていて。


そんな先生の正体は、警察が最も信頼する犯罪学者の一人。