『桃子母さんへ。


咲桜は高校一年生になったよ。桃子母さんがこれを読むことはないし、誰に見せるわけでもない手紙だから、色々ぶちまけて書いて行こうと思うよ。なんと言うか、私の頭の中の整理というかね。


まずはね、流夜くん――神宮先生と付き合うことになったよ。


知ってた? 流夜くんって、桃子母さんの弟だったんだって。


――って言うと、誤解しか招かないよね。桃子母さんは記憶喪失だったから最期まで知らなかったと思うけど、桃子母さんが、神宮美流子さんだったんだって。


美流子さんは、流夜くんのお姉さんだったんだって。て言っても、美流子さんは流夜くんの家に養子に入ってるから、本当の姉弟ではなくて、でも親戚だったから一応血縁だって聞いたよ。


流夜くんも在義父さんも知ってたんだって。黙ってるなんて性質悪いよね、全く。


……桃子母さんがあと少し生きてくれていたら、流夜くんと逢うこともあったのかな?


流夜くんたちが龍生さんの故郷の天龍を出て来たのが全寮制の中学に入るためだったから、ほんとに少しの時間差ってくらいだったのかな。


私が言うのも難だけど、流夜くんも桃子母さんも、逢っていても気づかなさそう(笑)