「まさかではなくやってるよ。もう現場の名物。在義さんでも止められないの」


「マジっすか⁉」


在義父さんが止められない⁉ りゅ、流夜くんと在義父さんのパワーバランスを甘く見ていた……? 斎月が加わった所為か?


そのとき、ぴたりと斎月が止まった。


一瞬、静寂が落ちる。


「兄さんの……兄さんのばかー! 咲桜姉様に嫌われてしまえー!」


「呪い吐いて行くんじゃねえアホ!」


斎月がいきなり泣き言みたいなことを口にして、《白》を飛び出した。


しかし誰も動じない。


「あの通りいつも勝つのはりゅうなんだ。あんな風に泣きながら走り去っていくの」


「追いかけた方がいいんじゃ――」


「大丈夫大丈夫。彼氏んとこ行ってるから」


「あ、くにはるくん? ……こんな扱い受けてるって知られたら、流夜くん相当嫌われるんじゃ……」


「それがねえ、司(つかさ)――苗字は司って言うんだけど、司も、斎月姫を止められるのはりゅうだけだってわかってるから、むしろりゅうは頼みの綱みたいな存在よ」


……斎月。相当だな、あなたは。私が頭抱えそうだよ。


「咲桜、ごめんな、うるさくして」