「俺、高校生だったお前には言えなかったことがいっぱいあった」
先生が先生ではない顔で喋りはじめる。
「お前は俺の大切な生徒だから放っておけなかったし、いつも気にかけた。でもそれが教師としてだけの感情だったかどうかは自信がない」
「………」
「正直、他の生徒にはない気持ちの動きを感じたこともあったんだ。でも、担任としてそれは正しくないと。お前の為にも突き放してやらないとって思ってた」
「……先生」
「教師と17歳の的井のあいだで俺も揺れてた」
あの頃の私は、近づいたと思ったら遠ざかっていく先生の背中ばかりを見ていた気がする。
先生は出逢った時から大人だった。
でもお酒が飲める、タバコも吸える年齢に私もなって、大人は子供が思うよりもずっと不完全だということが分かった。
だからこそ、愛しい人と支え合いながら生きていくのだと思う。



