「えーこっちはまだ桜咲いてないよ。そっちは満開?お花見もやりたいね」
髪の毛も伸びて、化粧も覚えて、ピアスも開けた。
この三年で色々と変わったけれど、私の中では変わらないものもあって。
私はいつも、いつだって先生のことばかりを頭に思い浮かべていた。
先生とは、あれ以来会っていないし、連絡さえ取っていない。
電話もメールもすぐにできる環境だったけれど、声を聞いたら寂しくなると思ってしなかった。
けれど、菜穂から先生は元気でやっていると聞いていたし、和谷先輩はなんと一緒に飲みにいったと言っていた。
みんな今でも繋がっていることが嬉しい。
「じゃあ、またね」
私は菜穂との電話を終えた。
札幌の桜はまだ蕾で、花びらは隠れるようにしてうずくまっている。
カツ、カツと、進んでいくヒールの音。
私はちゃんとした大人になれているだろうか。
少しは背筋を伸ばして歩けているだろうか。
いつか、先生に見てほしい。
17歳じゃない、私の姿を。
「的井」
春の風に乗って先生の声が聞こえた気がした。
……幻聴が聞こえるなんて疲れているのかな。
そう思って再び歩きはじめると……。
「的井六花」
今度ははっきりとした声が耳に届いた。



