……ふわっ。
と、その時。先生が私のことを引き寄せた。
ぎゅっと背中に回された手は力強くて痛いくらい。
「……先生、これはどういう意味ですか?」
「分かんない」
そう言いながら、先生はさらに私をきつく抱きしめる。
「私、先生に意識されていなくて苦しい時があったんです」
私も応えるようにして先生を抱きしめた。
ワックス掛けの数字準備室で先生に受け止められた時も。
酔った先生にキスをした時も。
睡蓮の池の前で先生に支えてもらった時も。
他にもたくさん先生との距離が近い瞬間はいくつもあった。
だけど、先生の心臓は私と違っていつも穏やかだった。
「先生の鼓動の音、こうやって速く鳴るんですね」
パーカー越しに聞こえる先生の心臓は、ドクンドクンと私と同じ音がしていた。



