先生と17歳のあいだ





「的井。手、出して」


先生にそう言われて私はゆっくりと右手を差し出す。先生は私の手のひらに重ねるようにして、なにかを置いた。



「……え、こ、これって……」


それは見覚えのある銀色の鏡。


先生の灰皿とよく似ている形をしていて、間違いなく鏡は私が修学旅行の時に見ていたものだった。



「あの時、こっそり買ったんだ」


「どうして……」


「お前になにかあげるって約束してただろ」



たしかに夏休み中の数学準備室で、そんなやり取りをしていた。でも先生が覚えているとは思ってなかったし、私のお小遣いでは買えないほど高価なものだったはず。



「こんな素敵なものを貰ってもいいんですか……?」


「うん。受け取って」


鏡にデザインされている雪の結晶。


私はまだまだ名前のように唯一無二にはなれてないし、輝きもないけれど。それでも、先生が私のために買ってくれた。


今までなにも言わずに、きっといつか渡そうと暖めておいてくれた鏡は、涙が出るほど嬉しい。




「泣くなよ」


先生が大きな手で私の頭を撫でる。