と、次の瞬間。ボーーッという長音が辺りに響き渡った。
なんだろうと、音の先を目で追ってみると……。
「あれ、北海道まで行くんだよ」
それはフェリーターミナルから出港した船の汽笛の音だった。
フェリーはとても大きくて、全長は200メートルくらいあるだろうか。横並びになっている窓から明かりが漏れていて、ゆっくりしたスピードでフェリーは海の上を進んでいく。
「遠いように感じるけどさ、この海と繋がってんだよ」
先生はフェリーを見ながら呟いた。
海だけなら東京湾もあったのに、わざわざ茨城県まで来た理由。
それはきっとこのフェリーを見せるためだったのだと思う。
「わざわざ出港時間を調べてくれたんですか?」
「うん。ギリギリで間に合ってよかったよ」
先生は口にくわえたタバコにライターで火をつけた。
暗闇に浮かぶ炎が、海の彼方へと向かうフェリーの小さな明かりに似ていた。



