先生はそのあと私の涙が落ち着くまで傍にいてくれた。
ずっと手を握りながら、時には背中も擦ってくれて、先生はひたすら優しかった。
……コンコン。
そして、夜。誰とも顔を合わせないように部屋に引き込もっていると、ドアが2回ノックされた。
「六花、入るよ」
それはお母さんの声。『うん』と返事をしないまま、ドアは静かに開いた。
「出掛けるの?」
私の手元を見てお母さんが言う。私はリュックの中に教科書やノート。それからお気に入りの部屋着や歯ブラシなどのアメニティセットを詰めていた。
もちろんこれは家出ではなく、今日は菜穂の家でテスト勉強をする約束をしていた。
「……友達のところ。明日の学校はそのまま友達の家から行く」
そう言って私は制服をシワにならないように綺麗に畳んでリュックへと入れた。
「女の子の友達?」
「うん」
「六花には泊まったりできる友達がいたのね」
「……うん」
お母さんは私のことをなにも知らない。きっと知ろうともしていなかったと思う。



