先生と17歳のあいだ




寝不足だからなのか、朝ごはんを食べなかったせいなのか。それからの授業はちっとも頭に入ってこなかった。



「六花。次、実験室だよ」


そして三時間目の休み時間。私は科学の教科書とノートを持って菜穂と廊下に出た。



意識ははっきりとしているのに、何故か身体がふわふわしてる。周りの騒がしい声や菜穂が繋いでくれる会話さえ今は遠い。




「大丈夫か?」


ぐらっと頭が揺れた気がして、後ろに倒れそうになった時……。誰かに肩を支えられた。

この大きな手の感触には覚えがある。




「どうした?具合悪い?」


それは心配そうに私の顔を覗きこむ郁巳先生だった。



……もし引っ越すことになれば、こうして先生には会えなくなる。


友達という繋がりだけでいいと。先生と話ができて、先生の存在を感じることができていればそれでいいと思っていたのに……。

それさえも叶わなくなってしまう。



「……先生、私……」


振り絞った声は廊下の雑音に掻き消されてしまうほど小さいものだった。


私の表情を見てなにかを察したように、先生は菜穂に視線をずらした。




「城田。的井のこと保健室に連れていくから、次の授業は欠席するって科学の安村先生に言っといて」


「え、う、うん。分かった」


不安そうな菜穂を横目に、私はそのまま先生の手を借りて保健室へと向かうことになった。