「ここは中級コースですよ。滑れないならなんで……」
「他の生徒たちに一緒に行こうって誘われてリフトに乗っちゃったんだよ。でもあいつらめちゃくちゃ上手くて普通に置いていかれたけど」
「……ぷっ、はは」
「笑うな」
いつもカッコいい先生ばかりを見てきたから、こんなにへっぴり腰でカッコ悪い姿の先生は初めてだった。
「つか、お前も完全に置いていかれてるけどな」
先生が目線で誘導すると、たしかに私のグループの人たちは林間コースへと向かってしまっていた。
私が最後尾だったので先頭のインストラクターが気づかずに滑走してしまったのだろう。
「別にいいですよ。すぐに追い付けますから」
私はストックを雪に刺して立ち上がる。一方で先生はまだ転んだ体勢のまま。
「起こして」
「ストック使えば立てますよ」
「無理。さっきもそれで板だけ滑って股関節やったから」
「もう、仕方ないですね」
私は先生に手を差し伸べて引っ張ってあげた。
私の力を利用するようにして先生は身体を起こして、その反動で私のほうに寄りかかってきた。
慣れないスキー板と雪の上で、先生を扱うのは簡単だ。実はちょっとだけ私のほうに倒れるように仕向けたのは秘密。



