……ガタガタ。
物音に視線をずらすと、私の様子を心配しているかのようにカメが水槽を引っ掻いていた。
「……ちょっと、失敗しちゃったよ」
カメに話しかけるようにして私は呟く。
あのままもう少し踏み込んでいたら、先生に気づかれるどころか困らせてしまう結果になっていた。
壁時計を確認すると、もうすぐ予鈴が鳴る時間。
そろそろ教室に戻ろうとすると、上履きでなにかを踏んだ。先ほど机から落ちたプリントの一部だ。
拾い上げて元の位置に戻すと、太陽の光に当たってキラリとなにかが輝いていた。
それを手に取って、私はため息をつく。
……机に灰皿を置いておくなんて本当に不用心。
禁煙もできないし、なにをしても長続きしないらしいし、先生ははっきり言うと脇が甘いところがある。
でも、隙はない。
先生の心に入り込む隙間がこれっぽっちもない。
【六花、次教室移動だよー】
静寂を切るようにして菜穂から届いたメール。私は悶々とした気持ちのまま数学準備室を出た。



