「たいちー。客引き手伝ってよ」
私たちがちょうど三年一組のテントの前を通りかかると、中から先輩のクラスメイトたちが顔を出した。
「お前がいないと別のクラスに客を持っていかれるんだけど」
「そうだよ。太一。早く戻ってきてね」
次々とみんなから声をかけられていて、先輩は本当に後輩からも同級生からも頼られているんだって分かる。
「先輩ってお友達から下の名前で呼ばれてるんですね」
再び歩きはじめた私たちは食堂がある方角へと向かっていた。
「うん。なんか俺の名前って呼びやすいみたいだよ」
「あ、私もそれ言われたことあります。六花ちゃんってせん……」
〝先生〟と言いかけて私は慌てて唇を閉じる。
「せん?」
「い、いえ。なんでもないです!」
私はなんとか必死で誤魔化した。だって先生にそんなことを言われたことがあるなんて、先輩に報告するのは違うと思ったから。



