それから私はみんなの身支度の邪魔にならないように一旦廊下に出た。
文化祭の始まりは九時半からなのでまだ一般客はいない。けれど、廊下にはすでに各教室へと呼び込むための派手な看板や天井まで飾られたカラフルな風船が揺れていた。
いつもの学校が別世界のように色鮮やかで、自然と心が弾む。
「おい、とりあえず点呼だけ取るから動くのやめて」
郁巳先生が風船と同じくらい派手な色のパーカーを着てやって来た。教室を覗きながら、ドアの上にされている装飾に頭が当たるようだった。
「あと別の場所で着替えてる男子も誰か呼んできて」
「はーい」
バタバタとクラスメイトが廊下を歩いていく中で、先生と目が合って物珍しそうに髪型を見られた。
「お、なんかいつもと違うじゃん」
そう言われて私は結んでもらった髪の毛を少しだけ触る。
「アレンジしてもらったんです。……変ですか?」
「ううん。いいじゃん」
軽く言われて、先生は教室に入っていく。クラスメイトたちの着物姿を見ても先生は同じ反応をしていた。
私だけを特別扱いしてくれないことは分かっているけれど、もうちょっと感想を言ってくれてもいいのにな……と、心でぼやいても、どうせ本人には聞こえない。



