「いえ、本当は和谷先輩がやる仕事だったんですけど、先輩は受験勉強で忙しいと思ったので勝手に引き受けてきたんです」
どうせ私は暇をもて余しているし、早く帰ったとしても待っていてくれる人がいるわけじゃないから。
「へえ、和谷と仲いいんだ」
先生がからかうような顔をした。その余裕がある表情に私はムッとする。
「なんでそうなるんですか?」
「だってプールも一緒に行ったんだろ?」
「ど、どうして知って……」
「俺、風の噂くんと友達だから」
「誰ですか、それ……」
私は動揺を隠せずに不自然に前髪を触った。
考えてみれば入場料もリーズナブルで近場で遊べるあのプールを同じ高校の人が利用しないわけがない。
菜穂はお喋りだけどペラペラとそういうことを喋るタイプじゃないし、和谷先輩だってそう。
つまり、誰かが私たちのことを目撃していて、それを先生に話した人がいるのだと思う。
「……私と和谷先輩が仲がいいほうが先生は嬉しいですか?」
「まあ、お前に友達が増えることは素直に嬉しいよ」
「………」
先生は担任として当たり前の答えを言った。
チクリと胸が疼く。
私は先生に女の人の影がチラつくだけで、こんなにも苦しい気持ちになるっていうのに。



