「今のは別にカメに対して言った言葉じゃないですよ」


「ん?じゃあ、なにを独り占めしたいの?」


私はその質問には答えずに再び水槽に目を向けた。



四六時中一緒にいられるカメを羨ましく思うなんて、けっこう私は重症かもしれない。



今まで私は先生への気持ちと葛藤していた。


認めるのが怖かったし、そんなはずはないと自分自身で否定し続けてきた。


けれど、それを止めて素直になった時、どっと押し寄せてきた感情は独占欲だった。



先生は人気者だし、今日だって一年生に囲まれてた。


『相談したいことがある』と言われればすぐに連絡先を教えるし、なにやらチャットグループにも招待されていた。


そこに下心が丸見えでも、先生は生徒を邪険にはしない。



いい教師でいようと思っているわけではなく、生徒たちが頼りたいと思った時に気軽に頼れる環境を作ってあげようとしてるだけだということは分かっている。


だから先生を独り占めになんてできるはずがないのに、どうしたって独占欲というものが消えてくれない。


……本当に気持ちを認めるということは、厄介だ。