「俺はそれから……夜景を見ること自体が苦手になって。
 でも、、うん。
 今日、藤花と見られて良かった。」

 回されていた両手に自分の手を重ねて握る。
 大きな手が私の手に呼応して握り返した。

「俊哉さん。
 恋じゃないって言われても。
 私は俊哉さんのこと、好きですよ?」

「……そう。うん。ありがとな。」

 腕に力が込められて抱き締められた。

 しばらくそのまま抱き締められて、夜景なんて見る余裕もなく座り続けた。

「さぁ。遅くなる。帰ろうか。」

 離れていきそうな高宮課長の腕をつかみ直して、今度は私がしがみつくように抱きついた。

「どうした?」

 優しい声が胸を締め付ける。