中の男だと思われる人物が話すなか、遥と山崎の耳に、聞き覚えのある言葉が聞こえた。
「おもたいねん永倉はん―…」
あぁそうか、と二人は顔を見合わせた。
外から聞こえた今の声は、永倉と遥がうどん屋に行って、酔った永倉を背負った山崎自身の声だったのだ。
ということは、今回遥、山崎がタイムスリップしたのは桂を取り逃がした日の夜と言うことになったわけだ。
山崎はニヤリと笑って部屋のしょうじに耳を近付けた。
「新撰組も間抜けよのう」
「隊のなかに門者がいることにも気付かず、長州の一軍が京都に到着したのにも気付かない…」
「見事に間抜けじゃなっ」
男の笑い声が聞こえて、山崎が少し下を向いた。

