だが、それも山崎によって遮られた。
「やめとけ、あっちが混乱するやろ」
山崎の冷静な判断だったが、あの日の遥はこちらを覗くように見た。
「あ、同じ」
そう。あの日の遥、あの日の自分は、全く同じ。つまりあれはあたしだったってこと。
だけど
遥があの時聞いた声は、遥の声でも、山崎の声でもなかった
「永倉…さん」
あの優しく囁き、あの声のトーン。
遥を呼んだあの声は、間違いなく永倉のものだった
(永倉さんが助けを求めてる)
とっさに遥はそれが頭に浮かんだ。
その時、地面がガタガタ揺れた。
「綾野」
山崎が遥の手を握り、瞬歩をした。
「あ、手に…」

