時のなかの赤い糸



『…永倉さん…』



月明かりだけが綾野と永倉を照らしていて、永倉は壊れ物を扱うように綾野に触れていった。




「…………」



何かが違うんだ。
聞きたいのはこの声じゃない。
触れたいと思うのはこの肌じゃない。

愛しいのは佐藤綾野じゃない。




「ごめん」



永倉は着物を羽織り直すと自室を出ていった。




『…ちっ』




綾野の背後になんわもの紫の蝶々が飛び交った。




「近藤さん」




永倉が近藤の部屋の扉を開くと、いきなり刀を突きつけられた。




中には泣いてる綾野がいて、それを囲うように近藤や原田たちが慰めていて。



沖田や土方、藤堂は永倉に刀を向けていた。