「あっというまにも程があるっていうか」 江戸の旅籠の二階の部屋から外を見た。 すっかり濡れて冷えきったから、さっき風呂に入って今は着物を着てる。 永倉はまだ風呂から帰ってこない。 「勝手だよね。勝手」 まあ永倉が出ていくならついていっただろうけれど、 何の相談もなしに急にだったから 微妙にむかつくと遥は出窓の段に肘をかけて顔をもたれさせた。 夜が明けようとしている。 金色の光がうっすら見えそうな感じだ。 (本当に、新撰組をぬけちゃったのかぁ) と、未だに実感のない感情に思いを馳せた。