「はあー、危なかった」


永倉は、遥を見つめる松本良順の目を思い出した。

興味深く、奥まで見たいというような松本良順の目に、遥がどうして気付かないのかが不思議で、


心配そうに自分をしゃがんで覗きこむ遥を見た。


(まぁ、何もなかったんだよな)


遥の表情を見て、永倉はフッと笑った。


「負けたらしいじゃないですか」

「うるせー」

「私が行けば勝ちましたよ」
「それはないね」

「ひどいですよ永倉さん」


遥は睨むように永倉を見た。

「…遥が伏見にいなくて良かった。
あのばに遥がいると思ったら心配で気が気じゃなかったと思う」

「私は大丈夫ですよ」