時のなかの赤い糸



「いいじゃないですか。
私も、医者になった動機は不純です。

理由があれば、それでいいんでんですよ」


松本良順は遥の後ろにいる人に優しく笑いかけた。


「永倉さん……」


遥も振り返るとと、困ったように笑う永倉がいた。


「遥」


永倉の言葉に頷くと、松本良順は「じゃあ」とその場を離れていった。


「大阪をでるらしい。一刻もすれば、江戸に向かう。それまでに、話そう」

「はい」


永倉は遥の手をとって、歩き出した。

しばらく歩いて来たのは城の小さな部屋。


遥が部屋に入ったのを確認して、障子を閉めた永倉は、一気に息を吐き出してその場に座った。