時のなかの赤い糸



「失礼しました」

出来るだけ音をたてないように遥は部屋の外に出た。

廊下を歩くと時々見える月に、看取れていると、ドンッと何かにぶつかった。


「これはこれは」

「すみません!!」


慌てて頭を下げて、この声の人物を思い浮かべた。


松本良順


「どうかしましたか?随分考えている顔だ」

覗きこまれて目を合わせると、松本良順の整った顔に月光で影がついていて

綺麗だと思った。


「局長は私が考えていることを言います。

私は、新撰組の中で1人にならないために、
永倉さんの足手まといにならないために、剣術を習いました。

ここまでやって来ました。
持つべき気持ちだけが、皆と違うんです。
私は、幕府のために忠義を尽くすなんて、口で言えても考えたことがありませんでした。

戦に行きたかったのも、永倉さんに会いたかったから…
局長は分かってたんです」


それだけ言うと、遥は俯いてしまった。