時のなかの赤い糸


* * *

「駄目」

「どうしてですか!!」


書き物をする近藤を前に遥が項垂れた。

「綾野さんをどうして一緒に連れてきたかよく考えてみなさい」


そう言えば、
一緒に行くことを希望をしていても、言う以前に近藤は遥を指名していた。


「戦に巻き込まないためだよ」

「そんな、」

「綾野さんは今までなんのために剣術を磨いたんだい?
市民のために?
幕府のために?

新撰組の中で1人にならないために?」

「全部です!!!!」


大きな音をたてて立ち上がると、近藤がフッと笑った。

「お疲れ様。歳」


え、と振り返ると、仁王立ちした土方がいた

「かっちゃん。見事な惨敗だ」


はっ、と笑いながら、遥より近藤に近付いた土方は、ストンと腰を下ろした。


見事な惨敗


鳥羽伏見の戦いは終わったのだ。
それだけがよくわかる。