時のなかの赤い糸



「後は任せたぞ。歳」

近藤の声は和やかで、笑顔の表情が見なくても遥の頭の中に浮かんだ。


「なんてこといってんだよ。かっちゃんはまだまだやれる。
諦めんなよ!」

「諦めてるわけないだろう」

ハッハッハッと高笑いしながら、近藤の影が障子に映った。


「俺は大阪に一足早く行く。

一番恐れていた戦になるからな」


坂本龍馬は言っていた。
“日本人同士殺しあって何になる”

近藤も同じ意見だった。


「まだ決まったわけじゃないんだろ!?」

「決まったんだ。

薩摩に痺れをきらした江戸の幕府側が、薩摩藩邸を防火したらしい。

朝廷は、天皇日本人逆らった逆賊として、幕府側を倒そうとしている」


優しい物腰なのに、寂しそうな声だった。


遥も山崎も、直に聞いている土方すら、怒りと悲しみで何も言えなかった。


「今この状況に、俺は只の足手まとい。
だから、…」


ガタッ

障子が開いて、中からニッコリと近藤が微笑んだ。


「総司と俺の護衛に、綾野遥を連れて行く」


………………バレてました?



「話は聞いていたね?」

近藤が言ったのに、遥と山崎は、「聞いていました」と、静かに答えた。