ゆっくり離れていく手を遥は離さなかった
この手を離したら藤堂は逝ってしまう。
「嫌だよっ」
「綾野…ι」
藤堂の困った顔は見飽きたのに、もう見れないのは絶対嫌だ。
頑としても離してくれない遥に、藤堂は刀を向けた。
「…………なんで…」
大切な友達の鬼の目。
歩む道が違うとわかってる。
誠の旗に集い笑い歩んだ仲間。
そして誠の道。
藤堂にとっての誠の道はここなのだ。
「…な、なにやってんだよ平助?!」
原田の槍が藤堂の刀を止めた。
「目ついてるか?」
原田が心配そうに藤堂を見る。
シャキ……――…ン
一瞬何があったなんか分からない。
藤堂の刀が遥から原田に向けられ、そのまま戦いになっていた。
遥から離れた手の温もりがまだ残っていた