時のなかの赤い糸



「だけどあたし永倉さんと別れてません」


遥の言葉に苦虫を潰したような表情を浮かべた土方。



「待ってるよ」



遥は何も言わなかった。

土方にもわかっている、遥が永倉と別れる気なんて全くないことくらい。



「ちゃんと永倉と話せ」

「話し、聞いてもらえません……」



土方の腕に力がこもる。



「そんなやつのこと忘れればいい」



話さなくてもいい。

ずっと腕の中にいればいい。



土方の悪心が脳裏を過る



遥が選べばいい。

選べばれるような男になればいい。



「俺のが遥を夢中にできるよ」

「何いってんですか」



フッと遥が笑って、土方が少し腕の力を弱めて遥の唇に自分の唇を重ねた。


驚きを隠せない遥のまつげが土方の頬に触れる。



(……夢中になるのは俺か……)



遥の脳裏を永倉が過る。

『遥』


こうして欲しいのは永倉なのに、遥の望みを叶えるのは土方で