「よかったぁ。敬助様、大好き」



明里はニッコリ笑って頬にあたる山南の手を握り締めた。



「山崎くん。明里を送ってやってくれないか」



山南は明里から目線を山崎に向けた。




「そのつもりです。」


「すまない」




山南が一礼すると、山崎は複雑そうな表情を浮かべた。




「そろそろ行きなさい」



「敬助様……」




別れを惜しむように明里の目がうるうるしだした。



「永遠の別れじゃないんだから」



困ったように山南は笑って、明里の涙を拭った。



「……そうやね。待ってるからね」

「あぁ」




明里から山南の手が離れて静かに山南はしょうじに手をかけて出窓をしめた。



しまったしょうじを見て、明里は静かに笑った。




「敬助様。なんで死ぬん?」



山崎は絶句した。



明里が、山南が死ぬ事は知らないと思っていたからだ。



「死装束くらいわかるんよ。うちかて」



「山南総長は、人の道を謝った訳ではありません」



山崎の言葉を聞いて、安心した明里は、大好きな人との別れに涙を流しながら歩き出した。