二人が何も話さないでいる間に、沖田が藤堂の隣に座った。



「私の刀は、大切な人を斬るためにあるのではないのに」




沖田の声は切なくて、一度も触れなかった話題をえぐり出すようだった。




山南の死は意味の無いものではない。




山南に教えられたものは大きい。




(山南さんの生まれ変わりは、きっと幸せだよ……)




遥は心の中でそっと唱えた。




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闇が訪れて、山南の切腹の時間が徐々に近付いていた。



山南は、静かに死装束に着替えると、最期になる月を見ようと出窓を開けた。



「敬助様」


「明里?!」




出窓の外にはいるはずのない明里の姿。


その後ろには山崎の姿があった。




「ねぇ、本間にちゃんと迎えに来てくれんのよねぇ」



明里は何も知らないように笑って山南を見る。




山南は安心したように頷いて、隙間から明里の頬を擦った。




「必ず迎えにいくから。ちゃんと里で待っているんだよ?」