「……でも、それをわかってない人なら、近藤さんは山南さんを殺すつもりだって攻められるんじゃ」
遥じたいそうなのだから、他の隊士が思っていないとは限らない。
「うん。きっとそうですね……大丈夫」
沖田は遥にニッコリ笑うと、壬生寺を出ていった。
(山南さん……)
遥は、ただ山南が生きることを願うことしか出来なかった。
遥は壬生寺の冷たい手荒い場で顔を濡らして目を冷ましてから屯所に戻った。
(こんな泣き顔じゃ帰れないよ)
「あ、遥。お前山南さんと昨日会ったか?」
騒がしい屯所で、遥は門に入るなりいきなり平隊士3人に詰め寄られた。
「え?いや……朝ごはんくらいかな」
嘘をついた。
遥が会ったと言えば、山南が富士山に行く事がバレて、近藤や土方以外の誰かが山南を追いかねないからだ。
「だよなーぁ、聞いた?」
「うん。沖田さんに聞いた」
平隊士の加納は、他の二人の隊士とまた捜索を始めてどこかに行ってしまった。