食事の後に、遥は案の定永倉に呼ばれた。



遥がいつもの縁側に座って永倉がその正面に立った。



「記憶戻ってないんだろ?」




遥は、永倉の声を聞いたとたん、この人には敵わないんだろうなって思えた。



「記憶は戻ったんですけど、感情というか心の方が戻ってないというか」




躊躇いがちに遥が言うと、永倉がクシャッと髪をかいた。




「……そっか。」




永倉があまりにも冷たい声だから遥はなんだか地に足がつかない感情に襲われたみたいに不安になった。



と同時に抱き締めて欲しいって思えた。




「……永倉さん。あの…抱き締めてください」



俯いた遥の声はこもっていて、永倉はゆっくりと遥を抱き締めた。




「……もっと」




遥の声をこんなに近くで聞いたのは久しぶりかもしれない。



永倉は切なる気持ちを抑えながらも生まれてくる遥への感情に負けそうになっていた。