その様子を斎藤が物言わぬ表情で見ていて、縁側で月を見つめた。
「会いに行っちゃだめですか?」
「良いんちゃう?」
ひょんな返事に遥は気抜けした。
「坂元龍馬は悪い人じゃないらしい」
そっかそっかと遥が頷く。
「鴨川の寺田屋に行けば会えるんちゃうかな」
「鴨川、寺田屋……」
連呼する遥にブッと山崎が噴き出した。
「また笑う……!山崎はすぐにそう噴き出しますよね、癖ですか?」
「ごめんゴメン、遥って俺の壺やねん」
理由になっていないと、遥はベエと舌を出して山崎の自室を出ていった。
「遥」
永倉の声がすぐに聞こえて驚くと、遥の手をグイッと永倉が引っ張った。
ついたのは永倉の自室。
「痛い!」
ドンッと鈍い音がするくらい強く遥は壁に押し当てられた。
「山崎の方が好きなんだろ?」
「……え?」

