時のなかの赤い糸



夕刻。



「桂が動きました」




屯所にていつでも出発の用意万端の新選組隊士が山崎がしょうじを開いて声を上げたのに立ち上がった。




「で向かう!」




近藤の合図を高らかに今日も桂を探しに小十郎や選ばれた新選組が京の町を走り出した。




「……坂元龍馬」




言った後も頭に何度もこだまする〝坂元龍馬〟の名前。



永倉遙が坂元龍馬。




全く遥の頭の中でつじつなが合わなかったし、どうして遙が新選組の、永倉新八の敵になっていったのか



全く分からなかった。




会って、確かめるしかない。




いつものように縁側に座った遥は決意したように立ち上がって山崎の自室に向かった。




「山崎さん、失礼します」



「遥、どないしたん?」




本を読んでいた山崎は、何事もなかったかのように遥に笑みを向けた。




「坂元龍馬のことなんですけど」



「気になるんや」




遥は返信のかわりに山崎の自室に入ってしょうじを閉めた。