向かった先はもちろん学校の渡り廊下。
そこには遙の姿もあった。
「俺も昨日聞こえたんだ、声が」
「そーなんですか」
遥は渡り廊下の手刷りに両手をおいて、グランドを見つめた。
思い出すのはあの日の自分。
まだ運命なんて知らない自分。
遥の手を上から覆うように新八が手をおいて、ギュッと握り締めた。
今は、新八がいる。
「永倉さん、」
「じゃなくて新八だろ?」
新八と遙が苦笑を浮かべていた。
「新八さん……」
幸せを全身で感じるように遥は目を閉じた。
ここから全てが始まったんだ。
あの日も、茜色の空がグランドを照らして、そしてあたしは――――
新撰組の隊士に。
親切にしていただいた近藤さんに土方さん。
楽しい話しばっかりじゃなかったけど、今残る気持ちは
感謝の気持ち。
誠の旗に一緒に集って歩めたことを、
遥はあの日からしたらずいぶん大人になったに違いない。
願わくはまた彼らと杯をかわしたい。