ツインテールの魔法


細かく描かれたイラストを見ていけば、なにかしらのヒントはあるだろう。


そのため、しっかり見ようとした。
だが、ノートに影が出来た。

夏音がゆっくりと顔を上げると、そこには日野が立っている。


「なにを見ているんだ、桃城夏音」
「……紘くんお手製の問題」


包み隠さず、素直に言った。
日野は笑顔だが、額には血管が浮かんでいる。


「今がなんの時間かわかるか?」
「……先生のざ」


すると、横から蒼羽が夏音の口を塞いだ。

蒼羽は夏音が言おうとすることがわかったのだ。
いや、蒼羽だけではない。
ほかの生徒にもわかった。


「授業中!世界史の!授業中です!」


夏音から意識をそらさせるよう、蒼羽は大きな声で言った。

蒼羽は夏音に余計なことを言うな、と目で言い、そっと夏音の口から手を離す。


「これは没収する」


日野は机の上に広げられたノートを閉じ、手に取った。

夏音はそれを追うよう、手を伸ばす。


「ノンのノート!返し」


蒼羽は立とうとする夏音の肩を抑え、座らせる。


「紘に迷惑をかける気?」


耳元でこっそり呟くと、夏音は一気に大人しくなった。

自分の評価が紘の評価にも関わってるくことを、夏音も蒼羽も知っていて、蒼羽はそれを利用したのだ。


「授業が終わったら、返してやる」


そして授業は再開された。