ツインテールの魔法


蒼羽はその本を取った。


「君、なにしに来たの」


紘が夏音にした質問を、わざとらしく言った。
だが、紘はそれを鼻で笑った。


「夏音の付き添いだ」


紘は蒼羽から本を取り返し、読み始めた。

蒼羽が文句を並べようとしたとき、厨房からまた大きな音がした。


見に行くと、ボウルが床に落ちていた。
幸い、材料を落としたわけではないようだ。


「すいませーん」


蒼羽が一安心すると、そんな声が聞こえてきた。
玲二は動けないし、夏音はまだ仕事を覚えていないだろうと、蒼羽が接客をしに、厨房を出た。


「では、こちらでお待ちください」


すると、すでに誰かが接客を終えていた。

接客にふさわしい笑顔をした、ショートカットの少女。
彼女は蒼羽に気付くと、鋭い目付きで見てきた。


「誰が無能とバカを連れて来いって言った?」


すれ違いざまにそう呟き、厨房に入って行った。


「相変わらず辛辣だなあ……」


蒼羽は苦笑した。

そして蒼羽も厨房に入ろうとした瞬間、夏音が飛び出してきた。
夏音は勢いよく蒼羽にぶつかると、若干拗ねたような表情で蒼羽を見上げた。


「蒼羽くん、あの子誰!?何歳!?」
「俺のいとこの結衣花だよ。十歳の小学四年生」
「年下の子にバカって言われた!」