先程から、逸人は真っ白なティーポットを手にしたまま固まっていた。

 芽以、なんで俺を見つめてるんだ?

 なにか言いたいことでもあるのか?

 そんなことを考えている間も、芽以はただ黙って、自分を見上げている。

 ……俺のことを好きだとか?

 ……やっぱり、圭太が好きだとか?

 いや、実は静を好きだとか!

 その瞳の奥に深い決意が見えた気がしたからだ。

 やはり、引っ越そう、と逸人は思う。

 圭太のデカい外車が入って来られないような、細い道でしか行けない深い山奥に。

 そして、静が歩いては来られない山奥にっ!

 最近、圭太はまともになった。

 いや、今まで、まともでなかったわけではないのだが……。

 死んでいた目が、仕事をするときだけは生き生きと輝くようになった。

 男の自分が見ても、惚れ惚れするほどに。

 女の芽以が見たら、きっと圭太を好きになるに違いない、と逸人は思う。