パクチーの王様 ~逸人さんがあやしい物を見ています~




 日向子たちが帰ったあと、芽以は二階の廊下で遭遇した逸人を呼び止めた。

 逸人を見つめ、芽以は言う。

「逸人さん、ぎゅっとしてください」
と。

「大丈夫ですよ。
 私もこの子も――。

 貴方に触れられない方が、心に障ります」

 逸人は少し迷ったようだったが、そっと抱きしめてきた。

 そのうち、その力が強くなる。

「ああ、すまん」
と逸人は謝り、手を離した。

「お前とお腹の子どもと、二倍抱きしめたくなるからかな」

 そう言ったあとで、やさしく抱き直し、逸人は笑う。

 芽以は逸人の胸で目を閉じ、思っていた。

 逸人さんの想いが伝わって。
 ほんのり身体が温かくなる――。

 やっぱり、この人に触れられている方が心にも身体にもいいような。