「なぁ、田城」
「何?」
それから一週間ほど経ったある日の朝。
私と楠木は一緒の電車に乗っていて、話しかけられた。
実はあれから私の気持ちをちゃんと伝えたら、楠木は自分のことのように嬉しそうに笑ってくれて。
頑張ろうって励ましてくれた。
「今日…また、小学校でバスケあるんだけどさ、お前にどうしても会ってほしい奴がいるんだ」
小学校でバスケ。
それはこの間私が泣いて、逃げ出してしまった日のことを思い出す。
「会ってほしい人?」
「ああ、お前と話してほしい奴」
その時、ふと思い出した。
楠木が先生と話していた“悠真”という名前の子を。
「……悠真?」
「……は?」
「いやっ、ごめんなんでもない…」
自然とその名前を口にしていて、楠木に驚かれたから慌ててなかったことにする。