やっとの思いで着いた、花火大会の会場。


その時にはもう既に、精神的に疲れ果てていた。



いつの間にか繋がれた手は離されたようで、私は巾着袋からメモ帳とペンを取り出して、悠真くんに言うことを書いた。



至近距離だけど、筆談をしようと思うにはわけがある。といっても、とっても単純だけど。


人混みがすごくて、いくら呼んでも聞こえないかもしれない。


耳が聞こえないから……自分がどのくらいの大きさで声を出しているのかわからないから、もし大きすぎる声を出したら周囲の迷惑になってしまうから。



歩きながらペンを走らせて書き上げたら、慌てて顔を上げて、悠真くんを探した。


離れてるか心配だったけど、悠真くんはすぐそこにいた。


良かった、離れていなくて。