「……離して」
顔が見えないから彼が何を言っているのか分からない。
私は力ずくで彼の腕から逃れようと身体をよじる。
力は弱かったのですぐに逃れられて、私は全力疾走で昇降口まで行く。
後ろをみると、彼は私の後を追って走っていた。
──本当は友達が欲しかった。
私の抱える秘密を受け入れてくれるような、そんな優しい友達が。
だけど自分の抱える秘密は、他人を遠ざけてしまうようなものだから。
もしバレたら、私と関わることを避けてしまうだろう。
私の秘密は人と関わることでバレるリスクが高くなる。
全力で逃げ切らないと……!
やはり男子の運動神経には敵わない、どんどん距離が縮まっていくのを空気で察する。



