随分と長い時間だった。



視界が明るくなる。


悠真くんの香水の──スターチスの匂いも離れていく。


悠真くんが離れて、ハッとした表情になる。



「……」


悠真くんは何か考えてたようだけど、謝罪も何も言わなかった。



「……じゃあ、元気で。風邪引かないでね」



私はただそれだけ言い残して、悠真くんから一時も早く、早く離れたかった。



「……」



こんな情けない自分を見られたくなくて、ひとりなのに、下を向いた顔を両腕で隠す。



瞼の裏に浮かぶのは、悠真くんの笑顔で。



そこに鼻をかすめたのは


彼のスターチスの残り香だった。




『連絡先を削除しますか』



『削除』のボタンを押して、電源をオフにした。




そして私はここから消えたんだ。



*