大輔さんは杏奈ちゃんの優しさに救われたんだ。
……私と同じように。
『だから、無理にとは言わないけど、日和ちゃんのことを教えて欲しいんだ』
こんなまっすぐな優しさをもらったのはいつぶりなんだろう……。
あかりちゃんにもたくさんの優しさをもらったけど……
また離れたらどうしようって考えてしまって、どこか遠慮してた。
「……あのね」
私は手話ではなく、口頭で話した。
その度に、大輔さんが杏奈ちゃんにメモ用紙を用いて代わりに伝えてくれた。
「……私は逃げ出したい。ダメなのは分かってるけど」
下向いた私に杏奈ちゃんは頭を撫でてくれた。
「……っ」
ハッとなって顔を上げると杏奈ちゃんはにっこりと見守るように笑っていた。



